横浜国立大学理工学部化学・生命系学科(化学応用EP)・大学院理工学府化学生命系理工学専攻(化学応用・バイオ/エネルギー化学教育分野)

横浜国立大学エネルギー変換化学研究室/光島・黒田研究室

変動性再生可能エネルギーと接続したアルカリ水電解のための自己修復性ハイブリッドナノシートアノード触媒

担当学生:西本武史 B4(研究当時)

Self-repairing hybrid nanosheet anode catalysts for alkaline water electrolysis connected with fluctuating renewable energy
Electrochim. Acta 323 (2019) 134812.

アルカリ水電解は低コストな電解方式であり、再生可能エネルギーを用いた大規模水素製造の候補として注目されています。 アルカリ水電解では、電源の電位変動や運転停止時に、電解とは逆向きの電流が生じて電極性能を劣化させる逆電流が生じることが知られています。 本研究では、ハイブリッドコバルトナノシート(Co-ns)が、劣化した電極を運転中に修復する自己修復電極触媒として利用できることを明らかにしました。

Co-nsは水酸化コバルトシートに有機分子が修飾された構造であり、水酸化コバルト由来の酸素発生触媒能と、電解液への高い分散性を併せ持つ材料です。 これを電解液に分散させておくと、電解時にナノシートが電極上に堆積し、触媒層を形成したり、劣化した触媒層を修復することが可能です。

アルカリ水電解用汎用電極であるNiを用い耐久試験(電位サイクル, 0.5 ~ 1.8 V vs. RHE)を行った結果、Co-nsを用いない場合は10000サイクル程度で過電圧の大幅な増加が見られました。 一方、Co-nsを電解液に加えると劣化が大幅に抑制されました(右図, 劣化のみ)。 さらに、修復操作として2000サイクル毎に定電流電解を5分行うと、劣化は殆ど観測されなくなりました。この様な挙動は単純な金属塩(Co(NO3))2触媒)では修復挙動は見られませんでした。

この様に、Co-nsを用いた自己修復触媒は再生可能エネルギーによる変動電源下での電極寿命構造に利用できると考えられます。