横浜国立大学理工学部化学・生命系学科(化学応用EP)・大学院理工学府化学生命系理工学専攻(化学応用・バイオ/エネルギー化学教育分野)

横浜国立大学エネルギー変換化学研究室/光島・黒田研究室

β-FeOOHナノロッドの高活性・高耐久なアルカリ水電解用自己修復アノード触媒への利用

担当学生:髙津正平 M2(研究当時)

β-FeOOH nanorod as a highly active and durable self-repairing anode catalyst for alkaline water electrolysis powered by renewable energy
J. Sol-Gel Sci. Technol. 104 (2022) 647-658.

近年、アルカリ水電解の電位変動条件でにおける耐久性向上が課題となっています。 当研究室では、ハイブリッド水酸化コバルトナノシート等の電極触媒を電解液に分散させ、劣化時に電極に堆積・修復が可能な自己修復触媒として用いてきました。 本研究では、より高活性なFe系材料を用いた自己修復触媒を検討しました。 β-FeOOHは非常に微細な針状物質で、電解液に良く分散させることができます。また、水酸化ニッケルとの複合化により、高い酸素発生の触媒活性を示すことも知られています。 β-FeOOHを触媒に用いたところ、電解液からニッケル電極上に集合し、非常に薄い膜を形成することが分かりました。 この薄膜を有する電極は、ハイブリッド水酸化コバルトナノシートよりも高活性でした。

得られた電極の耐久性能を、調べました。図は、電解起動と停止を繰り返したときの繰返し回数(cycle of durability test)と過電圧(η)の関係です。 過電圧が大きい程触媒性能は劣化していることを示しています。 通常のニッケル電極や、NiCo系酸化物電極では、50~1000サイクル程度で電極が劣化してしまいますが、β-FeOOHを用いた電極では性能を落とすことなく使用し続けることが可能でした。 鉄はニッケルやコバルトと比べても資源が豊富でありふれた元素であり、活性、耐久性の両面で有望な材料であると考えられます。